法律>スポーツルールと、外国人枠

よく、誤解されている方が多いのですが、厳密にはメジャーリーグにも外国人枠はあります。
70年代に労働省から、「各球団の外国人選手は、マイナーリーグを含めて10%以内(カナダは対象外)」という通達が出されています。ただ、これはあくまで通達でして、現在、紳士協定的に50%が限度となっています。
この辺、理由は簡単で、労働ビザの問題なんですよね。いくらでも外国人を受け入れるわけには、アメリカといえどもいかないのです。結局、MLBだろうとNBAだろうと、法律>>>各スポーツリーグのルールってのは間違いないわけです。
この辺は、どこも同じでして、今話題になっているサッカーの「保有権」ですが、ヨーロッパでは、EUの労働法の元に、ボスマン判決、契約が終了した場合の移籍の自由、EU圏内の国籍をもつ選手の同圏内での移動の自由が認められたわけです。
日本のJリーグには、移籍金また、移籍係数という問題がありますが、なぜ、日本ではヨーロッパと違うかというと、答えは簡単。そういう判決がでていないから。と、いうことになります。
もし、Jリーグの選手が、移籍金のために移籍ができず、Jリーグまたは球団を訴え裁判になった場合、ボスマン判決と同じ裁定が下されるのは間違いないでしょう。
話がややこしいですが、まず、スポーツ選手は「労働者」か、「自営業者」なのかという問題があります。Jリーガーの場合、契約は自由契約ですし、また最低年俸などの保証もなく、そして国際的(ボスマン判決を見ても)に「自営業者」となっていることからも、「自営業者」と規定されると考えられます。球団と自営業者との請負契約ということになり、保有権を球団が主張した場合、独占禁止法に引っかかります。アントラーズ中田浩の場合、1/31で契約が切れますので、それ以降は、どこと契約をしてもかまわないし、また移籍金というものも必要なくなります。
簡単にいうと、フリーランスか、年俸制の社員かということで、Jリーグとしては、Jリーガーを年俸制の社員と見ようとしていますが、国際的にはサッカー選手はフリーランスであり、だから会社間の移動に際し、契約が終了すれば何の問題もないということです。
日本人の良さなのか、悪さなのかわかりませんが、もし誰かが保有権に対して裁判を起こせば、間違いなく移籍金(契約期間内は別)、移籍係数などは無くなってしまうことでしょう。
中田浩が日本人的な性格で良かったねとも思ったりもします。
Jリーグとしては、球団間の格差を減らそうとしていますが、一番最初に書いたとおり、法律>各スポーツのルールなので、能動的か受動的(裁判などをおこされて)かわかりませんが、将来的に移籍係数などというものはなくなるでしょう。まあ、そうなった時は、一握りのチームだけが優勝を争い、経営的に弱いチームはどんなに頑張ってもJ1残留争いレベルってことになると思いますが。
対して、野球の場合。
メジャーだと、独禁法の適応外として認められ労働者扱いです。だから、世界最強の”労働組合”ができる。日本でも、労働組合を認めていることからも、また選手会自らストライキという労働者に認められている権利を行使したことからも「労働者」ということになると考えられます。
だから、球団に保留(保留)権があるのは、認められるのです。この辺、球団も選手会も都合のいいことを言っていて、選手会は、ある時はストライキという労働者の権利を使い、ある時は保有権に対して文句をつけているわけです。もちろん、FA制度の短期化、FAにまつわる移籍金を下げる、そして試合(労働)の機会に恵まれない選手の移動などの要望は労働者として当然だと思いますが、労働者としての道を選んでしまったことは自覚して欲しいとは思います。
 
話はずれましたが、私が今回書きたいのは、外国人枠の問題です。
最初に書いたとおり、メジャーにも外国人枠があります。また、よくヨーロッパサッカーのEU枠内選手の問題について、イタリア、ドイツではEU枠内選手にも制限をつけようとしていますが、上の保有権と同じで、判決が出ていないだけのことで、ある選手が、例えばスペインの某選手が、イタリアのチームでイタリア人でないために制限にひっかかり、試合に出られずチームを訴えたということになったら、間違いなく、その選手が勝訴し、それによって、母国の選手が半分を超えなければいけないというローカルルールは消えてなくなると考えられます。
法律とローカルルールの問題は、日本プロ野球でもあり、プロ野球の外国人枠問題は、それによって変革してきたといえます。まず、在日外国人は、最初は外国人扱いされていましたが、人種による差別(在日のために日本の企業に就職できないということだから)として、圧力をうけ改正。日本の学校で5年以上学業を受けたものは外国人扱いから外れました。しかし、これは学歴による差別(学歴によって、日本人扱いか外国人扱いかわかれるのですから)ではないかと圧力をうけ、5年以上日本に住めば外国人扱いから外れるようになりました。
結局、野球の中だけのローカルルールは、大きな流れに逆らえるわけはなく、日本プロ野球も遠い未来には、外国人枠もなくなると考えられます。
ただ、やはりまだ先の話としたほうが、現実的だといえます。
今の、プロ野球選手は全部で約800人。非常に小さな枠です。この半分が外国人となったら、プロ野球への道が、ただでさえ厳しいのに、さらに厳しくなります。今のドラフト3位あたりまでしかプロ野球に入れないということになるでしょう。
外国人枠の話をする前に、国内の整備。例えば3部制などを、先に進めていくべきだと思うのですがね。もちろん、最終的には外国人枠撤廃を考えていくという方針は正しいと思います。
私は、今の段階でも、台湾、韓国の選手を外国人枠から外すべきではと考えています。だが、日本プロ野球は改革すべき場所がたくさんあり、外国人枠の撤廃は優先事項ではないと思います。