合併、売却、新規参入。たかが・・・されどプロ野球!

渦@アレさんからのトラックバックをうけて、この本を紹介します。
以前に読んでいたんだけど、最近、根気がなくて、紹介しないままでした…orz
彼の意見を抜粋しながら紹介していきます。

90年代は、世界中でスポーツビジネスが成長した10年だった。大リーグもそのひとつである。その年商は2003年で4200億円。この数字は1995年当時に比べると約2.6倍。これに対して、日本のプロ野球の市場はどうか?現在、その年商総額は約1200億円。この1200億円という数字が、少なくともこの10年ほど、ほとんど変わっていないことが問題であり、その結果、その間2.6倍に成長した大リーグに大きく水をあけられたそのお粗末さを素直に認め、原因を分析し、将来にいかすべきだ。
プロ野球においては、成長していないにもかかわらず、選手の年俸ばかりが10年前の約3倍と大きく膨れ上がってしまった。よほどの蓄えがない限り、これでは苦しくなる。
近鉄バファローズの経営破綻に端を発した今回の一連の騒動は、大多数の野球ファンには突然起こった問題のように思われているかもしれないが、少しでもプロ野球の球団経営に関心のある人にとっては、
すでに何年も前から予測できたことだ。

困った時の長嶋頼みは、もう出来なくなった。長嶋さんが倒れたのは、何かある度にこのスーパースターを引っ張り出しては、その人気に頼って、とりあえず問題を先送りし、自らの足で立とうとしなかった日本プロ野球界の他力本願が崩れていく象徴的な出来事だったのだ。
長年頼り続けてきた屋台骨が金属疲労でぐらついたのと同時に、思考停止のままで、ぬるま湯につかっていたプロ野球が、右往左往しているのは偶然ではない。

プロ野球業界の人々自ら、大リーグ優位の風潮に異を唱えるどころか、すすんで認めているのは、どうにも理解に苦しむ。
「最高の舞台で力を試したい」
日本のプロ野球は二流であると自ら認める、プロ野球ビジネスの根幹にかかわる重大な発言である。

と、プロ野球についての警鐘を鳴らす小林至。
そのために、どいうすればいいのか?小林至は提言を続けていく

・大リーグから学ぶのは、客商売としての認識だ
・観客数の水増しはやめろ
・”お客さん”をデータ化せよ
・日本野球の発展を阻害するプロアマの壁
・年俸に減俸制限があるのはプロの世界ではない
・野球協会(プロアマ一体)の設立

といった、悪く言えばありきたりな意見も述べると同時に、小林至は独自の見解を述べる。例えば、普及活動と慈善活動。

選手会が全選手から一律、年俸の5%を供出させて基金する事からはじめてほしい。

可能かどうかはともかく、やれば選手会へのイメージも変わってくるだろう。
また、日本プロ野球はメジャーのファーム化したことを直視し、それによってプロ野球が衰退していくだろうという現実論を語る。

いくら海外で盛んなスポーツでも、国内に魅力あるプロリーグがなければ、その競技が衰退の道を歩むことは、プロ化を果たしたサッカーと、失敗したほかの競技(バレー、バスケット、ラグビー)の明暗を見れば、よくわかる事だ。サッカーがプロ化する以前は、この4つのスポーツの、日本における発展程度はさほど変わらなかったと思う。いくらグローバリゼーションの時代だと言ったって、現実の人間の移動には、国境そしてビザの壁がある。大リーグは隆盛でも、プロ野球の衰退は野球の衰退に直結する。

そして、それに対抗するために

こちらからワールドシリーズを仕かけ、大リーグに闘いを挑むことだ。日本のプロ野球を、大リーグのファームから、再びきらきら輝く憧れの世界に引き戻すには、実力でそれを証明するしかない。そして、今ならその力を保持している。

また、メジャーの視聴率(特にオールスター)が低迷しているから、メジャーでもワールドカップ開催をもくろんでいるという、メジャー側の裏事情も説明し、こう続けていく。

要するに、機は熟している。もっとも、血気盛んに挑発すべき日本のほうがすっかり気概を失い、大リーグにおもねるばかりが気がかりだが、きっちりと絵を描けば、MLBが乗ってくる舞台は整っている。
タレントを失い続ければ、いずれ戦いようがないところまで戦力差は開く。大リーグが日本の有力選手を根こそぎ持っていくのが先か、きちんと闘いを挑んで再び日本の野球が輝きを取り戻すのが先か。これは時間との競争でもある。
早急に大リーグに対峙すること。そうでなければ日本のプロ野球は、大リーグのファームとして、ファームに見合ったサイズへの縮小を余儀なくされるだろう。

感想を言えば、こういう考え方が、僕は好きです。
開国して道を開き、そして、その中で独自のナショナリズムを持って海外と当たろうという、考えが。
また、それに基づいて、世界と地域という一見相反する(地域密着戦略と、世界戦略)両極が今後のプロ野球の軸としている。簡略に言えば、欧州サッカー形式ですね。地域密着と、チャンピオンズリーグという世界戦略の両輪が、ヨーロッパサッカーの隆盛を招いたわけで、世界戦略を考えるためには、

日本プロ野球アジアカップ選手権の実現に動く際、2リーグ制にしておく意味を見出すのは極めて難しい。地域ー国内ー大陸ー世界という制度が出来ているサッカーの世界に2リーグ制はない。

となる。まあ、この辺の異論はいろいろあるでしょうけど、僕は2リーグ制派ではないので、考えはよくわかる。
とはいえ、最後の文章が泣けてくる。

そこで、問題になるのは、プロ野球界に指導者がいないことだ。

悲しい…orz
 
”世界戦略”という言葉が猪木なみに好きなので、話が飛びましたが、もう少し小林至の意見を紹介していきます。
日本プロ野球の欠点として、地域との付き合い方が下手だとはっきりのべています。例えば、横浜ベイスターズあっての横浜スタジアムだが、広告料が一切、球団側に入らない。地方自治体から金を引き出すために、”大洋”から”横浜”に変えたが無駄であった。それに比べて、Jリーグでは例えば福岡では地方自治体(福岡市)から引き出す事に成功している。これは、官という体質から、”大義名分”が必要となるからであるとしています。

Jリーグの理念に「国民の心身の健全な発展への寄与」と入れる戦略は秀逸だ。自治体の性質を知り尽くしていなければできない。

と、”サッカー”を、あえて入れず、だからこそ地方自治体から金を引き出す事ができたJリーグを認めている。
また、大リーグでも似たようなもので、政治との結びつきが強く、そして地方自治体の協力というか全面的な奉仕で成り立っていることを言及する。

ホワイトソックスは、シカゴ市とイリノイ州から球場建設の補助に始まって、球場入場者の不足分や球団経営の赤字の補填、さらには年間の補助金という条件を引き出す事に成功した。
いっぽう、これらの負担金は市債の発行とホテル税を2%上げることで賄われた。つまり、税金で球場を作ってやり、それをプレゼントしたようなものである。

だからこそ、政治との結びつきも強く

大リーグはその道のベテランで、主なプロスポーツ団体のなかで唯一、ワシントンに専門のロビイストを雇い、献金額もスポーツ団体としては最も多い額を拠出している。
政治献金はMLB機構だけではなく、各球団も熱心である。今回の選挙で、シンシナティ・レッズが132万ドル、ボルティモア・オリオールズが34万ドルの献金をしている。たしかに大金だが、これで球場が建てば安いものである。大リーグのビジネスは実にしたたかなのだ。

と、している。
だが、日本プロ野球もJのように地方との結びつきが中心でいいのか?
小林至の答えはノーだ。

大リーグが地域名を名乗るのは、そうしたほうが儲かるからだ

そして、Jリーグを例として、疑問を呈している。そして、

繰り返しになるが、アメリカのプロスポーツが企業名を名乗らずに地域名を名乗っている理由は、その方が利益があがるからである。つまり、親会社の広告費として計上できる価値より、地域を名乗った方が儲かるかる−ポイントはそこだ。日本でそれが可能なのか。地域密着型のプロ野球を唱えるならば、この疑問に答えてからだろう。
ただし、日本のプロ野球にも、地域からお金がきっちり生み出される時代が来るよう、そのための努力をすべきであることに異論はない。

としている。これには、僕も、全く同感だし、何度か書いてきた事です。

Jリーグ球団の財政を見ると、収入のうち20%以上が、責任企業つまり旧親会社からの広告宣伝費の名目による補填である。
先日、日本サッカー協会の幹部クラスの方と話をした際、興味深い話を聞いた。
プロ野球は不思議なところですね」
「どうしてですか」
「お金を払う事によってたかって批判するじゃないですか。
プロスポーツの魅力やステイタスはお金の部分が少なからずありますよね。ということは多額のお金を使って支えてくれるスポンサーはとても大事な存在だというのが常識でしょう」
「Jリーグは地域密着でやっていますね。私はプロ野球はJリーグから学ぶところがたくさんあると思ってますよ」
「新しく作ったから、制度面でよい部分はたしかにあると思いますが、各クラブの実情は企業スポーツですよ。それよりなにより金がない。1億円もらえる選手なんてほとんどいませんよ。プロ野球は何人いましたっけ?」
「日本人選手だけでも74人ですね」
「でしょう。プロとしてどっちが魅力あるか明らかですよ。お金がもらえないスポーツなんて発展しませんよ。Jリーグが企業名を出せばもっとお金が回るかどうかはわかりませんが、プロ野球はそうやってまわってきたから、いいじゃないですか。」
「いやあ、将来を考えるとね」
「だって、買いたいという企業がたくさんあるんでしょう。いいじゃないですか。それよりも、今お金を出してくれる人を大切にした方がいいですよ。他球団のファンがやっかみで金満だと言うくらいならいいですけど、みんなでよってたかって批判しているうちに、野球界全体に金が回らないようになったらどうするんですか」

まあ、いろいろな意見もあるんでしょうが、この辺の球団名問題に関しては、小林至の意見の方が、僕には玉木正之より現実的な部分もあると思います。