インド

スマトラ沖地震による"殺人巨大津波"で、インド最大の被災地には水や食料、避難所もろくに与えられない被災者がいる。カースト制度からも除外された最底辺の不可触賎民「ダリット」(「抑圧された者」の意)と呼ばれる人々だ。
日本ではほとんど報じられていないが、欧米メディアの現地報道によると最も被書が大きかったタミルナド州マドラスの南部では、およそ50OO人のダリットが給水タンクから隔離され、食糧配給の長い列の最後尾に押しやられているという。津波が起こる前、ダリットを労働者として使っていた地元漁民は、今や彼らを避難所から排除。残飯を与え、洗面所さえ使わせない状況になっているのだ。45の村が津波にのみ込まれたナーガパティナム地区では、約1600人が郊外の学校や結婚式場に一時避難している。しかし、ダリット解放運動の指導者18人が今回の大津波で水死した今、ダリット達は国連供給の飲料水を「汚した」と非難され、ビスケットの配給すらも貰えないという。彼らは食料や衣類の配給を受けようとして排除され、避難所近くの道路わきで寝るよう強いられた。階級が上の女性たちが「アイツらが近くにいては、とても安全に思えない」と訴えたのがきっかけだった。
ダリットは、一般に「不可触賎民」「アンタッチャブル」と呼ばれ、現行のインド憲法上では廃止されているが、今なお「不浄な存在」として差別・隔離され続けている。その数は全人口の約20%、2億人近くいるとも。家すら持てず、トイレ掃除など不潔な仕事しかできず、今回の地震では津波犠牲者の死体処理を請け負っている。「ここにはトイレもありません。カースト制度が上の階層の人々は、仮設トイレすらわれわれに使わせてくれないのです」(ダリットの10代少年)。
悪名高いカースト制度の影響は徐々に薄れていたとみられていたインドだが、"殺人巨大津波"によって再びその恥部が現れた格好だ。(東スポ

宗教や制度、国は、人間が幸せに暮らすための道具であって、その道具が人間の上に立ってしまうのが、人間の世の愚かさか。