トミノ曰く

富野御大の週刊プレイボーイでのインタビュー。相変わらず飛ばしていて、いつも雑誌から転載するときは、少し削るんだけど、今回は富野の言葉は削ってません。しかし、自分からWPBって名乗る週刊プレイボーイのセンスはいつもながらアレだな。

「映画化の話をいただくまで、Zガンダムのことはすっかり忘れていました。嫌なことは必死で忘れようとしていたんですよ。ファースト・ガンダムの後に作ったいくつかのオリジナル作品がそれを乗り越えることができなくて、『次はガンダムをやってくれ』と言われたのは、僕にとって敗戦宣告を受けたに等しかった。そういう自分に現実に起こった出来事を、怨念を、物語の中に吐き出した作品だったから。その結果、どんなにがんばったってエンターテインメントにならねえよ、というところまで陰陰滅滅とした重い物語になった。これ、実写でやってたらメッタクソにヤバイよね、という」
そんな監督自身にとっても鬼門である作品を、なぜ再生させようと思ったんだろう。
「ものすごく簡単に言ってしまうと、Zガンダムを、映画という娯楽、エンターテインメント、芸能の一ジャンルにしたいと考えたんだよ」
いや、親父さん、すでにガンダムは一流のエンターテインメントだと思うであります!
そうだったら宮崎アニメに勝ってたわけよ!ロボット物だから負けたという意見もあるけれど、『スターウォーズ』が評価されてることを考えたら、ロポットが出てようが戦艦だろうが関係ない。要するに、娯楽作品として完成してないから負けたんです。ガンダムをもう一度、娯楽エンターテインメントの王道に戻すしかない、そう思ったのは間違いか?」
ん?ってことは、もしかしてテレビ版と劇場版のZガンダムはまったく別物なのか?
「物語の世界観、事件の展開はなにひとつ変えていません!キャラクターの人間関係も変えていない。だが、ひとつ変えたのは主人公カミーユの感じ方。『アナタの固定的なガンコなものの見方が問題なんですよ。そこを変えればアナタだって少しはマシになるのに』なんて言葉があるけれど、それをカミーユでやらせてみよう、そう考えました。この物語の中では戦争状態は現実なわけ。そういう現実の中でも、ちょっと目線や気分を変えると世界の見え方が違ってくるんじゃないかと思うのね。それをやったら、第三部でハッピーエンドにいけるかもしれないな、という確信を持ってやってる」
「9・11のアメリ自爆テロ以降のイラク戦争北朝鮮問題などを見ていくと、Zで描いた戦争の状況論が現実化してきたことを実感したんだ。だから、Zを通して現実を見直してもいいだろう、という勘がありました」
「今回の三部作の中でも目本がティターンズ化していくのは問題だぞ、という話をしています。Zの世界とリンクして考えると、今の日本が憲法改正論も含めて右翼化の傾向が強まれば、朝鮮半島、中国、ロシア、アメリカが、かつてのABCD包囲網ではないけれど、各国が集まって日本の右翼化を止めようとするのではないか?なにかの潮流によって、『日本が悪い!』という話になりかねないでしょ?じゃあ、このまま目本は戦前の軍国主義のような状態にいくかというと、それは違うような気がするのよね。僕が思ってるのは、次の時代は世の中のすべてがホリエモンみたいな金融主体思想が支配する国になるんじゃないかと予測します。けど、ある方が言ってらっしゃるんですが、金融が社会や国家を滅ぼすという観点もあるんで、僕は、これが21世紀の目本の一番の危機になると考えています。
北朝鮮なんかやっちゃえ!』『お金があれぱなんでもできる』とかいう軽率な発言・行動ができてしまう今の世の中は、ある意味、パラダイスでしょう。しかし、日常の暮らしというのはそれだけではすまされない。もう少し冷静に、ふつうに、常識的におさめなきゃいけない。我々の世代は、戦後から始まる日本経済の繁栄の中で、そういった社会のバランスをとっていくような認識=コモンセンスを育てていくことを忘れてしまったと思っている。今回のシリーズは、それに対するアンチテーゼですから、多くの人に見ていただきたいですね。だからといってね、すべての学校で劇場版Zを流してくれってわけにもいかないのよねえ
「人間ひとりひとりの生気が、男女のありようが匂ってくるんですよ。ある人は第一部を見た後、セックスをしたくなったと言う。『アムロとフラウボゥが再会するシーンがありますよね?あの目、ふたりはヤリたかったんだろうな。でも、カツ・レツ・キッカが一緒にいたからヤレなかったんだろうなあ』と。確かに、スクリーンを見るとアムロが心の中でささやいているのよね。『こら、カツ!オマエがいるからフラウと寝られないだろ!』って(笑)
今回、シャアと女性兵士レコアの、大人の関係を暗示させるようなシーンもありますが、それを見ていてもわかりますよ。ああ、こいつらは5,6回は寝てるな、と
「エンターテインメントや芸能はエロスという部分に触ってないと完結しないものでしょ?今回はそれをすごく意識していますね。それも日常行為の中でエロスを感じさせる、というようにね。エロスとは裸がなくては描けないというものではないんです。例えば、WPBのグラビアでスゴイなと思えるものは、不思議と露出の少ない過激でないものが多い。やはりキモになるのは、女の子の瞳に覚悟が見えるかどうかだと思います。ただし、最近はそうでない女の子が増えているような気がする。WPBグラビアに出るような子には〈撮られている〉という覚悟がほしいんです。それはスタッフにも言えることで、『写真の芸』という創りがいまひとつだな、という点にもあって、気合い入れてほしいな。
実は僕、中2の時にカメラマンを挫折してるの。大学に入った時に再度挑戦してみたんだけど、やっぱりだめだった。僕は単発の一枚絵が作れないんです。たくさんの絵があって、それを配列する…つまり、物語で絵を見せるのが僕のセンスだと思うの。それにアラーキーさんみたいに被写体に本能的にバーンと入っていけない。要するに、今の話の流れで言えば女性のえり好みが激しいんでしょう(苦笑)。
それについては具体的な被写体がひとりいます。松浦亜弥さんです。この半年くらいの間で、彼女を超えるタレントはいません。冷静に考えたら、彼女は飛び抜けた美人ではないと思うのね。なのに、なぜこんなにアピール度にパワーがあるんだろう、と魅かれます。特に『午後の紅茶』のCMのあのへそ出しは必殺でしたね。ある時、正面きってあのCMを見る機会があって、『えっ!?あややか!これが、あややの魅力なのか!そうなのか!!』と。そこでCMの中の松浦さんの姿・動きを全部覚えようと思ったけど、あのCMは背景の作り込みもいいから、そっちに目がいっちゃって全部が全部を覚えられない!あのCM映像は商品化されていないんでしょうかね?あったら欲しい!」