その裏で何が

IT関連企業「楽天」と「ライブドア」が新規参入を目指し、杜の都・仙台を本拠地として壮絶なバトルを展開した。水面下では両企業の「仁義なき戦い」を象徴する、ある"事件"が起きていた。
先に手を上げたのは、ライブドア近鉄オリックスの合併が浮上した際に近鉄の買収に動いたが、断念して8月19日に新規参入を表明した。実は、合併が表面化する前に近鉄側から買収話を持ちかけられていた楽天も、1度断った後に水面下で再検討していた。ただ、そのときはすでに合併が具体化し、実現性はなかった。そんな経緯がありながら、楽天三木谷社長は、表面的には球界参入への興昧を示していなかった。一方、ライブドアは新規参入表明にあたり、準備室を立ち上げ、堀江社長以下役員が仙台を本拠地とする新球団の構想を練った。
両トップの対照的な動きが、その後へ大きく影響してくる。
ライブドアの準備室に、楽天執行役員のO氏が個人的な関係から参加していたのだ。うイブドア関係者が困惑の表情で振り返る。「その時点で楽天が野球界に参入する話はなかった。個人的な関係で
O氏には協力いただいて、ウチの構想や計画をすべて把握していた。構想が重なるのは、こんな経緯があるからではないのか」。
〇氏は、楽天が9月15日に新規参入を表明した日、「楽天の野球を担当する」と突然ライブドアに告げている。本拠地、球場改修、オンラインのチケット販売、インターネツトを活用した戦略…。ライブドア側にすれば、ライバルの楽天側に計画、構想を把握されてしまったことになる。両社の仙台を中心とした東北行脚が活発化し始めた9月25日、ライブドア堀江社長が、NHK仙台で楽天三木谷社長を待ち構えたことがあった。約3分問の立ち話で、堀江社長の「落としどころはあるのか」の問いかけに、三木谷社長が「参入の説明をした」と一方的に語っただけで別れた、あのシーンだ。その短いやりとりの中で、堀江社長。はO氏の件を抗議している。
もっとも、楽天側にしてみれぱ、O氏の動きは非難されるようなものではなかった。楽天広報は「O氏は楽天執行役員で、球界参入の件は把握してなかった。個人的にライブドアとの関係はあったようですが、その前提で楽天が参入する話は知らなかった。参入する情報を知り得たタイミングで、ライブドア側には話をしていると思います」と説明している。
本社を都内の同じビル内に構えるIT関連企業2社が、同じ仙台を本拠地とする構想で新規参入を争った。結果的に楽天に軍配が上がった壮絶な戦いの背景には、こんな1歩も引けない舞台裏もあった。