”世紀の悪役”にも言わせてくれ

ナベツネ文藝春秋に手記を書いているのだが、ナベツネの思想がよくわかります。
まず、最初にイエロージャーナリズム(大衆相手に扇情的、煽動的な記事を売り物にするマスコミ)に、はめられたと自分を弁護。読売新聞会長らしく

今回、そのようなイエロー・ジャーナリズムだけでなく、朝日新聞及び朝日系の日刊スポーツまでが、大衆煽動の先頭にたったのは珍しいことだ。これまで、プロ野球、特に巨人関係記事を、意図的と思われるほどに小さく取り上げていた朝日が、今回の球界再編問題浮上後、八月末までに、社説で五回、夕刊「素粒子」で九回、巨人のことを取り上げ、スポーツ面での今年七、八月のトップ級の巨人関係記事は二十一回に達した。読売新聞との販売競争を意識したものであろう。

と、暗に、朝日新聞をイエロージャーナリズム扱いするナベツネ朝日新聞との販売競争を意識したものであろう。
グーグル先生は素晴らしすぎます。

さらに、例の「たかが選手」発言は、罠にはめられたとナベツネは訴える。

古田選手は「同僚のヤクルト・真中選手が『オーナーと話をしたい』と言っているが?」と記者に聞かれて、
「そうですね。でも、それは無理じゃないですか」と答えだけだった。私が反発した「古田発言」はもともと存在せず、虚構にすぎなかった。「たかが…」と言ったのは、まことに軽率だったが、すぐに気がついたから「立派な選手もいるけどね」と追加したのだが、「はめ取材」を得意とする記者たちに、「たかが選手」は野獣に食いつかれた獲物のごとくむさぼられ、「立派な選手」はゴミの如く捨てられてしまった。

確かに、マスコミの誘導質問も問題が、だが「たかが」と思っていることが問題だということに気がつかないナベツネ
オーナー辞任の引き金となった一場事件は

仮借なく不正を追求した新聞の主筆として、自社の醜聞となったこの「栄養費」なるものは、金銭の多寡ではなく、責任者処分以外に思案の余地はなかった。かつ右翼団体に読売と巨人の威嚇的動きがあるとの情報があったが、裏でもみ消すような姑息な手段は論外であった(当方の対処が迅速だったためかは知らぬが、実際は即物的要求は一切なかったが)。

えっっっっと、まず右翼の要求は、ナベツネ追放なわけで、見事に右翼に負けたのではないのでしょうか。
それと、仮借なく不正を追求してきた新聞社が、こんなことこんな、不正をしているわけですから、そのトップの責任はどうなるんでしょうか?ナベツネさん。

ここから、ナベツネの手記を紹介しながら、妄想ディベートをしてみます。ナベツネの部分は、文藝春秋からです。

ナベツネ:このスト騒動の中で、いわゆるスポーツ評論家を先頭に、メディアの中で繰り返されたのは日本のプロ野球の制度はMLBに比べて遅れており、メジャーの制度・慣習を取り入れるべし、とのメジャー礼賛論であった。それは著しい事実誤認や、無知、不勉強からきたものが多い。

牛太郎:私も、メジャー礼賛がいいとは思っていません。しかし、日本のプロ野球が制度として遅れているのは確かではないでしょうか。メジャーを見習えとは言いません。ですが、メジャーやJリーグの良い部分は、積極的に取り入れて行くべきではないでしょうか。特に、アメリカならNBA、NFLのようにリーグとして黒字を出している組織は、参考に値すると思います。

ナベツネ:MLBでは、テレビ放映権をコミッショナーが管理し、放映権料を各球団に分散している。だから巨人戦の放映権料も、コミッショナーが取り上げて全球団に公平に分配せよという論があるが、MLBでは、実際はワールドシリーズと、それに先立つリーグ優勝決定戦を中心に、百から百十試合が全国放送されているに過ぎない。日本でも、日本シリーズやオールスターの放映権料は、コミッショナ事務局に入り、同事務局及び、セ・パ両連盟の経費になる。すでに日米とも同じようなものになっている。

牛太郎:逆に言えば、日本では、オールスター、日本シリーズで、最高10試合しか、コミッショナーが扱える試合がないことになりますね。まず、これが、日米のコミッショナーの権力の差異の要因の一つと思えませんか?また、あなたはアメリカのことしか言っていませんが、海外、例えば日本の放映権料の分配を無視していますね。MLBの放映権料としてNHKが払っているのは50億円。パリーグの1球団分の収入という膨大なお金が、日本から渡り分配されています。

ナベツネ:MLBではローカル放送については、各球団の収入となっており、ローカル放送の収入がバカにならないという放送メディアの日米間を知らないことが誤解につながっている。ヤンキースでは少なくとも三千万ドル入り、エクスポズは五〇万ドほどしかこういう収入が無い。

牛太郎:だから、私もMLB礼賛ではないのですよ。だが、ローカル放送の放映権料も分配しているNFLやNBAは黒字なので、それを参考にするのはどうなんでしょうか?また、日米間の放送メディアでいくなら、日本では、日テレさんのようなキー局から、よみうりテレビのような地方局へと放映を売る形になっているわけです。大阪という他チームのエリアで放映している場合は、
ホームの権利を妨害しているわけですから、よみうりテレビで流すプロ野球の試合の放映料を阪神に渡す、またはコミッショナーで預かるというのは、いかがでしょうか。
ヤンキースの試合を流すニューヨークのローカル放送は、シアトルに流れているわけではないのですから。

ナベツネ:巨人軍の地上波放映権料を全額収奪して、これを各球団に再分配せよ、という主張などは、日本では市場経済の完全な否定であり、独禁法違反になる競争制限であり、かつ憲法の定める財産権の否定にもなろう。

牛太郎:しかし、独禁法に厳しいアメリカでは、裁判の結果、放映権の分配を認められたのは、どういうことでしょうか?少なくとも、他社の権利である地域権を侵害している可能性があるわけで、既得権のために他社の営業を妨害しているとすれば、それこそ独禁法違反ですよ。

ナベツネ:MLBではエクスパンジョンでのびてきたのであり、日本のプロ野球は球団を増やすべきだという主張があるが、これも大変な事実誤認である。
2001年にオーナー会議で二十八対二の圧倒的多数で、二球団削減が可決されている。選手会はもとより、ミネソタ州の上下両院議員の超党派的反対や、州裁判所で球団廃止差し止めの仮処分が認められたこともあって、MLBはツインズを、当面2006年まで延命させることで選手会と合意した。エクスポズは、二十九球団が金を出し合って、オーナーから買い取り、コミッショナー預かりになったままだったが、去る9月末にようやく、来期より首都ワシントンの企業に身売りすることが決定した。
いずれにせよ、コミッショナーやオーナー会議がいったん球団削減を決めざるを得なかったことは、MLBのエクスパンジョンが失敗したことを明白に物語る。

牛太郎:球団削減案が全て悪いとは思っていません。しかし、メジャーでは、オーナー会議の決定後、猶予があったわけですよね。わずか2ヶ月で、全て終わらせると言ったあなたと、大分違いますね。もちろん、エクスパンジョンという道が全てではありません。ですが、球団数削減が全てでもないのです。メジャーのように、なぜ、猶予期間をもたなかったのですか?11球団で、バファローズを買い取るという選択肢もあったのですよ。球団削減という一要素だけ、メジャーを礼賛していませんか?
 
長くなってきたので、明日に続きます。