新球団の見積もり

今週の週刊新潮では、プロ野球に新規加盟を申し込んだ「ライブドア」も「楽天」も、両社失格になる可能性があるという記事がありました。両社の収支計画を、この記事を紹介しながら見ていきます。

『収入』
      ライブドア  楽天
広告収入    2.0   18.0
入場料収入  24.6   21.0
テレビ放映権  5.0    9.9
ネット放送   1.0    0.5
グッズ販売   8.5    3.7 (億円)
 計     41.1   53.1 (億円) 

・入場収入
まず、入場料収入で、両社の違いがでています。ライブドア、は1試合2万人で客単価1,750円。楽天は、1試合1.5万人で客単価1,900円。
これに対し新潮では

ライブドアは1試合平均2万人の観客という夢物語。楽天の”1試合1.5万人で客単価1,900円で21億円というのは、年間20万円で販売するボックスシートが4000席、年間2万円のサポーター席(注:外野自由席の年間売りと思われる)が3000席と一般席が8000席で計算されている。これはパリーグの新球団ではありえない数字です。昭和49年のロッテ時代(日本一になった)では、公称で1万3000人。実数は1万人に満たなかった・・・」(球団関係者)
「観客動員には苦労したなぁ。わしはお客さんを増やそうとして、町の小さな会合まで顔を出したし、コーチャーズボックスに立って色々なパフォーマンスもやった。優勝したときは少しずつ
お客さんが増えたが・・・あとは寒さ。あの底冷えは経験しないとわからん。お客さんも寒かっただろうし、やっぱりドーム球場が必要だろうね」(金やん)

以前のロッテ時代を元にするのはどうかなとは思います。もちろん、過信は禁物ですが。
しかし、楽天の数字を見て思うのが、いかに年間ボックスシートを売ることが大事かということ、対してサポーターというのは大事な存在ですが、お金にはなりづらい存在だということが明白になります。
1年間70試合として、サポーター席は1試合285円の収入にしかならない。対して、ボックスシート席は、1試合2850円。
楽天の予想を元にすると
サポーター席:285円×3000席=86万円
年間ボックス席:2850円×4000席=1140万円
一般席:2200円×8000席=1760万円
で、計約3000万円が、1試合の収入になります。
ライブドアでは、客単価が低いことからも、年間ボックス席を減らして一般席やサポーター収入を増やしての計算になると思われます。
今のプロ野球経営にとって、年間ボックスシートを買ってくれる企業の存在の大きさと、サポーターは必要だが、実は経営の助けにはあまりならないということが、あらためて明白になったと思います。
1試合あたりの観客動員よりも、いかに年間シートを売るか。これが、経営の生命線と言えるでしょう。
楽天の出した見積もりが悪いとは思えませんが、11月ごろから営業をかけるとしてどこまで仙台、東北の企業が買ってくれるかというと、正直厳しいと思います。
 
・放映権料
新潮の記事を続けていくと、

放映権料収入の11億円に対して
パリーグで過去にも放映権料で10億円を超えたケースはほとんど無かったはずです。西武に清原が入団して何度も日本シリーズに出場していた頃でも、10億円には達しなかった。ダイエーが頑張って、頑張って、やっと7〜8億円。」(元ロッテ:小林至)
「きっと巨人との交流試合を前提として弾き出した数字なのでしょう。確かに巨人戦は1試合1億円〜1億2千万円の放映権料が入りますが、仮に6試合としてその半分を宮城で開催しても3億円。地元テレビ局だけなら、高くて1千万円。ラジオ中継なんてせいぜい20万円程度。本気で11億円と計算しているとしたら大甘です。」(解説者:有本)

これが、パリーグの現状です。
交流試合をもっと増やしてほしいパと、少なくしたいセの球団の気持ちもよくわかる。たとえ、巨人頼りといわれてもね。
今のままだと、交流戦6試合という話がでているので、楽天案よりライブドア案を取った方がよさそうです。
 
・広告収入
新潮では

楽天の内訳では10億円のメインスポンサー1社に、2〜3億円のスポンサー数社を獲得すると見込んでいるが「放映権料を上回る広告収入を得られるなんて、新しい球団ではありえません」(大坪教授)

ちなみに、広告収入は大阪ドームで10億円ほど、東京ドームは20億円以上といわれています。だが、問題はいくら球団に入るかなのです。東京ドームでの日ハムは、全く球団に入らなかった。神宮のヤクルト、横スタの横浜も、球団にはあまり入っていないと言われています。
ライブドアの広告収入は、その面を考えにいれた結果と思われます。支出の面(後述)をみると、球場使用料が5千万ですので、球場の広告収入の一部は球場にまわるとみていいでしょう。だからライブドアが正しいかというとそうでもない。両社に願いたいのが、公言どおり、ちゃんと球団を独立化してほしいということです。そうすれば、独立した球団が、チーム名やユニフォームに、「ライブドア」「楽天」と名前をつけるのだから、その企業から広告料をとるのは当然ということになります。楽天野球クラブ(だっけ?)という野球球団のメインスポンサーが、楽天という一企業であるという形になるということ。
この辺、まだ両社とも、メジャーがどうとか言う割には、昔の感覚なんですよね。球団の独立採算を訴えるなら、球団名のネーミングライセンス権利というのを、しっかり考えていくべきだと思います。だから、広告収入に関しては、楽天案を僕はとります。むしろ、ライブドアは、今のままだと、球団を親会社の広告塔としてしかとらえていない、旧い考えの他チームとなんら変わってないとも言えます。この辺、ホリエモンへの疑問なんだよな。
 
ネット放映に関しては、まだわからない部分もあるのでパス。
 
グッズ収入ですが、ライセンス料の割合にもよりますが、10%あたりがいい線じゃないでしょうかね。そう考えると、ライブドアの場合、86億円もグッズを売らないといけないわけで、厳しい数字と言えるでしょう。もちろん、何かアイデアがあるのかもしれませんけどね。
 
・まとめ
以上を元に、僕なりの収入予想
広告収入  20.0(球団名のネーミングライツ権の確立も考えて。
           球団名のネーミングライツ権=15億円、その他5億円)
入場料収入 18.0(年間ボックスシート販売が厳しいと思いますので)
テレビ放映権 5.0 (巨人との交流戦6試合)
ネット放送  1.0
グッズ販売  3.7(楽天案の方が妥当でしょう)
計     47.7 (億円)
 
異論もあると思います。
また、球団名のネーミングライツ権という、日本球界では、まだ一般的に確立していないものをあてにしているのは、甘いかもしれません。
残念ながら、ネーミングライツ権うんぬんの前に親球団からの広告料がなければ、パの球団の収入は30億円〜40億円あたりという現実が、よく見えてきます。
 
では、支出面を見ていきましょう。

『支出』
       ライブドア  楽天
球場使用料  0.5    0.5
選手年俸  20.0   22.0
人件費    9.5   11.5 (億円)

・選手年俸
選手年俸ですが、新潮では

「もし、近鉄オリックスのプロテクトからもれた選手ばかりを集めるとすれば、なんとかこの枠内で収めることもできることも可能かもしれません。しかし、それでは到底、強いチームを作ることはできません。強くなければ人気も出ず、人気が出なければ観客は集まらないし、放映権も高く売れない。その結果、球団経営は取り返しのつかない”負のスパイラル”に落ち込んでしまうのです」(NPB関係者)

この考え自体、旧いかなと思います。弱くても、オラがチームの試合だから観にいくというのが、今、プロ野球が目指している形だと思うのですがね。もちろん、プロとしてのある程度のレベルは必要だとは思いますが。
それは、置いといて。
日本人の年俸は広島、オリックスで17億円。これには外国人選手の年俸が入ってませんので、実際は広島、オリックスクラスの選手だけの総年俸は22億円あたりはいくと考えられます。また、両社の見積もりでは監督・コーチの年俸と球団スタッフの給与も含まれているわけで、見積もりが甘いと見られても仕方ないでしょう。
また、上記の見積もりでは、契約金が入っていません。もちろん、栄養費も。選手の年俸の高騰化が、よく問題であげられますが、実際は選手との契約金の高騰も問題なんですよね。
ウェーバー制ドラフトや、FA制度の変更など、金のかからない選手獲得制度の確立、そして選手の年俸カットは、やはり必要ですね。
・人件費
人件費に関しては、いろいろと批判がでています。新潮でも

「キャンプ費用として1.5億円の経費が見積もられていました。でも、球団経営を知っている者にいわせれば、間違いなくその倍はかかる」(球団関係者)
試合の運営費用として見積もられた6億円の経費には、用具の運送代やチケット制作費、試合の演出費用と遠征費用が含まれている。が、本拠地、仙台という場所柄、とても、こんな金額では折り合わないという。
「仙台でのホームゲーム以外は否応無く、全て遠征となります。しかもパリーグは北海道から九州まで足を延ばさないとならないので、とても足りません。まさか選手を鈍行電車で移動させて、木賃宿にでも泊めるというのなら話は別ですが・・・」(球団関係者)
「用具の輸送費だって大きな支出です。全てトラックで運ばれますが、ナイターが終わった翌日の昼には遠征先に届いていないと困ります。つまりトラックを夜通し走らせるわけです。通常は球団が、大手の運送会社と契約しますが、これだけで年間1億円はかかってしまうでしょう」(有本氏)

一説には、20億円近く、これら運営費がかかるといわれています。楽天は、旅の窓でも使って安くするのでしょうが、近鉄とか西武とかは系列ホテルを使って安くしているんですよね。

・まとめ
支出に関しては、あの広島でも60億円を使っていると言えば、一番わかりやすいと思います。
今のままの制度だと、削っても60億円の支出は覚悟しておいた方がよさそうです。
 
収入の項で、48億円ほどの収入見積もりを出しましたが、支出は60億円。
収入では、球団名のネーミングライツ権利料(15億円で計算)も計算しましたので、
独立採算方式でいくと、12億円の赤字となります。
もちろん、異論はあるでしょうが、今のプロ野球、特にパ球団の苦しさというのは、よくわかると思います。
両社の見積もりの甘さを指摘されるのは当然だと思うが、ちゃんとプラスマイナス0になるように、球界を変えていかないといけないのは、改めて思う。しっかりやればなんとかなる球界に変えていかないとね。

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